帰国日。
前日のものすごい早寝のせいで3時に目が醒める。
雨の音がする。13時のフライトから逆算して朝ごはんを食べる時間を決めてお店をチェック。
ゲストハウスから徒歩7分のところに良さげな店があるのでそこに行くことにしてグーグルマップに印を入れておく。
試しに帰りのフライトのオンラインチェックインを試みたところあっさり成功。
福岡発はカウンターチェックインしかできなかったのだけど。
ただし、超過手荷物を予約していたかものすごく気になり始め、予約時のメールを焦ってチェックする。
無料の7キロ分に加え、追加で20キロ分足して購入していることを何度も確認してホッと胸をなでおろす。
だって空港で追加を取られたらどえらい金額になるから。
でも、夜中の3時にそんな心配で眠れなくなる私って…
朝食は印を入れておいたお粥屋さんに行ったのだが、店の前まで来て恐ろしいことに気づく。
つい一昨日来たのと同じ店だった。
店の名前も、そこに行くまでの道も全く覚えていない私って…。
そら恐ろしくなるが、尖沙咀の有名どころのお粥屋さんで7:30にオープンしているのはここだけなので、気を取り直して前回とは違うものを頼むことにする。
エビワンタン麺 (今回3回目)
ピータンのお粥 26HKD
油條 10HKD
エビワンタン麺 34HKD
豆漿 13HKD
合計86HKD
だいぶ早めの9時にゲストハウスをチェックアウトし、地下鉄経由のエアポートエクスプレスで空港へ向かう。
くどいようだが、つい半年前に同じルートで空港に向かったはずが全く覚えていない。
学習能力がないのか、記憶力がないのか。
エアポートエクスプレスを降りてから、飛行機に乗るまでのルートが全くわからない。
ネットで一生懸命調べた結果、私が乗る香港エクスプレスは第2ターミナルでチェックインを行うが、実際に飛行機に乗るのは第1ターミナルらしい。
(らしいって、半年前に乗ったんだろ!)と自ら力なく突っ込んでみる。
オンラインチェックインはしたものの、荷物は預けないといけないのでやはりカウンターに並ばなくてはと思い、長蛇の列を覚悟して行ってみると、ほとんど人がいない。
えっ?ここじゃない?と思いながらもカウンターの番号を確認するとここで合っているようだ。
預けるために重いスーツケースを計りに乗せてみると、おお!17.7キロ。
何度も確認した甲斐もあってか、追加手荷物の範囲内で済んでいる。
実は、超過手荷物を20キロ分支払っているにもかかわらず、カウンターで「そんな形跡はない!」と言い放たれた時のために、グーグル翻訳で「超過手荷物分のお金を支払っています」という英語を調べ、練習しておいたのだった。
ネットで航空券を頼んだ際に超過手荷物分も含めて買ったときのメールもちゃんと取ってあるし、万一うろたえて手が震えてそのメールを探し出せなかった時のために、スクリーンショットも取っておいたが、全て必要がないとわかりだいぶほっとする。
なぜこんなに超過手荷物に怯えるのかというと、実はつい4ヶ月前に台北からの帰国便での苦い思い出のせいだ。
あの時も超過手荷物分のお金を払っていたので調子に乗って瓶詰めを何個も買い込んだところ数キロばかりさらに超過になってしまっていて、その数キロのために目が飛び出るほど(数千円ではあるが、私に取っては充分目が飛び出る金額。)の追加支払いをしなくてはならなかったのだ。
自分のこまさは恥ずかしいが、いつかは鷹揚になりたいものだと思う。
とにもかくにも無事にチェックインできたので、入国審査も抜け、搭乗時間までのひとときを空港ラウンジで過ごすことにする。
香港空港にはラウンジが3つあり、そのうち2つが出発専用で制限区域内にある。
今回目指したのは制限区域内のひとつで、私が乗る便のゲートに近い方に行くことにする。
ラウンジにはいろんな席があり、ひとりずつのボックス席、ファミレス風ボックス席、シンプルなテーブル席などのほか、大きなガラス越しに離着陸する飛行機がよく見える明るい窓側席などもあり、せっかくなので窓側席に座ることにする。
朝ごはんをかなりがっつり食べていたのでそこまでお腹は空いていなかったが、あとは帰るだけと思って、食事と合わせてまたビールを飲む。
ここの名物はカールスバーグの生で、特殊な専用カップをサーバーにセットすると、カップの底からビールがせり上がってくるという不思議な仕掛けになっている。
どうにも珍しいのと、おいしいのとで3杯も飲んでしまい、ビールがせり上がってくるさまを動画にもおさめた。
さぞかしこれが大人気なのかと思いきや、飲んでいるのは私だけで、他のお客はワインやソフトドリンクを次々取っていく。
ラウンジでの後半はさすがにお腹がいっぱいになってきたこともあり、コーヒーに切り替える。
そうこうしているうちに、搭乗時間が近づいてきたのでラウンジを出る。
搭乗口はラウンジからわりに近いのだが、世の中何が起こるかわからないので、常に15分前行動を心がけている。
ところが、余裕を持って締切り15分前に、チケットに書いてある66番搭乗口に着くが
どうも様子がおかしい。
最終搭乗を案内されている便は、どうも私が乗る便ではないようだ。
あれ?搭乗口が変更になった?と思って係員の男の人に聞くと「ここじゃないよ。」と一言。
どこなんでしょうか?と聞かれてもこのひとも困るんだろうなと思ったのと、かなりまずい状況であることを同時に理解し、慌ててインフォメーションを探すが見当たらない。
緊急電話があったので飛びつく。
電話は2つあり、1つは各航空会社直通で、もうひとつはHELPと書いてある。
私が乗る香港エクスプレス直通番号にかけてみる。音声案内が流れているがよく聞き取れない。
仕方なくHELPの方にかけると女の人が出たので、焦ってどもりながら「私は香港エクスプレス638便に乗ろうとして今66番ゲートにいるんですがどうも違うみたいですどこに行ったら良いですか?」というようなことを、何語かわからないような英語で言ったところ、電話の向こうの女の人は奇跡的に理解してくれて、「2、0、5に行きなさい!」と言ってくれた。
その時点で搭乗締切時間まで15分を切っていたが、同じターミナル内だし、頑張って走ることにした。
「ソーリー、そーリー!」と言いながら早足と走るのを繰り返して205番を目指したが矢印が示す方に205番はなく、エレベーターがある。
迷う間も無く乗り込むと、周りはなぜか空港職員らしきおじさんが数人。
おじさんたちに「205に行きたいんです!」と切羽詰まって言うとおじさんの1人が「205ね、わかった!」と、行き先ボタンを押してくれた。
しかし、エレベーターを降りたら搭乗口なのかと思ったら違って、今度は電車に乗らなくてはならないことがわかった。
こっちだ!と思って走っていった電車の乗り口を見ると、恐ろしいことに「市内行き」と書いてある。
違う、こっちじゃない!と慌ててキョロキョロして、やっと乗り場を見つけ、さらに走る。
ちょうど入ってきた電車に飛び乗り、「何とか間に合ってくれ!」と祈る。
2分くらいで到着した電車を降りてエレベーターを駆け上がる。
この時点でアルコールは完全に抜けたようだ。
はるか遠くに見える205に向かって、歩く歩道を「ソーリー、そーリー!」と言いながら走って何とかギリギリ到着。
最終搭乗の乗客の列についてほっと胸をなでおろす。(今日2回目。)
足はガクガク。
正しい搭乗口の「205」
そして搭乗。
ものすごく久し振りに窓側席に座った。
小学6年生で初めて東京にちびっこひとり旅をして以来、これまでにかなりたくさん飛行機に乗る機会はあった。そんな子どもの頃を経て、いつの頃かトイレに行くのにもお隣りに気を使う窓側より、開放感があって常に飛行機の中の様子が見渡せる通路側を好むようになっていた。
LCCを選んで乗るようになってからは少しでも安くあげるために座席指定はしなかったし、家族や友達と一緒に出かけるときに限って座席指定をしても、窓側は必ず一緒に行く誰かに譲るようにしていた。
ところがひとり旅の今回、チェックインが早かったからか割り当てられた席はA席。
どんな席数の飛行機であっても窓側に違いない席だ。
せっかくだからと思いながら、ぼんやりと窓の外を眺めてみる。
飛行機がゆっくり滑走路を進んでいき、とうとう離陸のための長い端っこに着いて、エンジン音が大きくなった時、ふと「飛行機がなぜ飛べるのか、まだはっきりしたことは分かっていない。」と、どこかで聞いたことがあるのを思い出した。
なにも、今思い出さなくてもいい情報だと思った。
窓の外を見やると、翼が見える。翼は何枚かの薄い金属板を重ねて構成されているようで、風に揺れるたびに重なった部分が少し開いて向こう側の景色が見える。
「こんなにグラグラしていて大丈夫か?」と思うが、きっと大丈夫だから飛んでいるのだ。と自分自身に言い聞かせる。
翼のうしろにものすごく細いピンのようなものが幾つもついている。何かのセンサーらしい。
ハトか何かが捕まっただけで折れそうなくらい細い。
前にどこかの飛行機が故障して緊急着陸した時、原因はそういう細いセンサーのうち1本が折れてしまって、何か大事な数値が正確に測れなくなったためだと聞いた気がする。
AIだ、RPAだという時代にこんなことでいいのか?という疑問も湧いてくるが、きっと大丈夫だから飛んでいるのだ。とまた自分自身に言い聞かせる。
轟音の中、飛行機が離陸した。
また、「飛行機がなぜ飛べるのか、まだはっきりしたことは分かっていない。」と、どこかで聞いたことがあるのを思い出した。
なにも、今思い出さなくてもいい情報だと思った。
それと、「飛行機事故のほとんどは、離陸と着陸の時に起きる。」と聞いたことがあるのも思い出した。
ああ、なぜに今思い出す…
窓の外には香港の街が遙か下に見える。
「落ちたら間違いなく死ぬな。」と思った。
あたりまえだ。
そう言えば、今朝チェックアウトしてきた香港のゲストハウスのベッドは、さすが土地が狭くて人口密度が高いだけあって、見たことのない3段ベッドだった。
しかも初日にあてがわれたのはいちばん上段。
「落ちたら怪我する。気をつけなくては…」と思ったが、この高さはもちろんそんな段ではない。
そんなことを考えているうちに窓の外は真っ白な雲海と真っ青な空しか見えなくなり、離陸の時のいろんな心配はいつのまにか忘れてしまっていた。
前半順調、後半山あり谷あり絶壁ありの3泊4日が終わったが、無事に帰ってこれたことでまあよしとすることにする。
買い込んだ食料品たち
私はホントにエビが好きなんだと改めて実感。